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おとついの夜にカレーを煮ておいたので、2日連続の通院もあまり苦にならない。付け合わせの野菜を刻み、スープとトンカツの支度だけして家を出る。カレーは偉大だ。
不妊専門クリニックのお医者さんはこう言った。 「胎のうを確認してから2週間心拍が確認できなかったら、それはもう流産の可能性が高いんだ」と。 その後いちおう内診をしてもらったが、既にあきらめはついていた。 きのうそれを聞かせてもらえれば、夕べのうちに美味しいスパークリングワインがいただけたではないか。 今後の注意として、生理を2回経るまでは薬も基礎体温もお休みして、温泉に行ってというアドヴァイスをもらってから会社に向かう。カレーを弁当にも入れてきたのにスプーンを忘れたから、コンビニでスプーンを付けてくれそうなサラダを買うついでに、好物のチーズも買う、無意味に歩きながら食べる。 今朝、起きたらなんとなくおなかがぺちゃんとしていたから、やっぱりだめなのかなとは思っていた。 何年も前から検討しつつも、収納スペースが取れないという理由で断念していた圧力鍋の購入に、スペースの問題をいっさい考慮しないまま踏み切るという、特級の贅沢をする。 アマゾンのお急ぎサービスは、だれかの時間外労働につながって社会を良くしないという観点から使わないことにしている。今日は使う。いいのだ、非常時は。 とりあえず仕事をこなして家路につく。会社の界隈はラーメン屋激戦区。 妊娠してから豚の脂がダメになって、特に、好きだったラーメンが匂いも厭になったのに、おとつい急に食べたい気がしたのは、この秋一番の冷え込みのせいかと思っていたんだな。 途中の成城石井に寄る。ここのお酒コーナーなんて高いとばかり決め付けてたけど、決め付けはあかんな。千円台のプロセッコやカヴァが豊富だし、シャンパンでも2千円程度から揃っている。 なんだこれならもっと早く利用するんだった。これからは覗くようにしよっと。 レジのお兄さんが行儀がよくまだ子どもと言っていいくらい若く、キャンペーンがどうのと話しかけてくるのを、うるさそうに遮る声が、我ながら驚くほど不機嫌だった。こりゃ、弱ってることは認めて自覚しなきゃダメだなというところだ。 近所の総合病院にて。初診時の所要時間が2時間40分だったのに対し、2週間後の今日は1時間50分だった。1時間近くも短縮されていると考えると快挙だが、前回は3連休明けの飛び込み受診であり、今回は平日で予約を取ってあった。
この伝でいくと、ただ「順調ですよ」などと言われるために定期的に2時間かけてるひとも少なからずいる道理で、妊婦というのもなかなか大変である。 なお、私に関して言えばまったく順調ではなかった。胎芽の心拍が確認できないという。 主治医の見解は、「見通しは厳しい」。 また、「1週間後にも心拍が確認できなければ、残念ながら流産ということになる」。 きょう胎芽の心拍が確認されたら、出産準備に類することを解禁するつもりでいた。 逆に、ダメなら飲酒解禁、好きなスパークリングワインでもいただこうと思っていた。 どっちもできない。 きょうはとても天気がいい。このままつくばエクスプレスに乗って山登りにでも行きたいような気分だ。台風一過のこんな青空の日は、きっと感動するくらい意外なところから富士山が見えたりするんだろう。 と思いながら出勤する。 会社のパソコンで、ついあれこれ調べる。どうも、受容がうまくいってない。 主治医が、かつて私の卵胞が育っているのを見逃したらしい(その2日後に不妊専門クリニックで示唆された可能性のひとつだ)という過去が、過剰に思い出される。いちど不信感を覚えた時点で、見切りをつけておくべきだったのかもしれない。 とりあえず、不妊専門クリニックにて受診、セカンドオピニオンを取ることとする。 同僚が校正したゲラをチェックしはじめたら、「こりゃマズいかも」と感じた。
自分の〆切は明後日と少し余裕があるので、3時間と時間を切ってチェックに時間を割くよう判断する。結果は、単純な誤字脱字が16折で7つばかり出てきた。もともと誤りの少ないゲラなので目立つ。 なんでこんなの見落とすかなと、見落とした本人も思うであろうようなミス。ちゃんと見ているのかなあと私でさえ思うし、お金を払っている版元さんのかたはもっとそう思うであろう。 管理者としてチェックする作業は字面を追うだけで、内容にまでは踏み込めない。 実務者として臨む校閲は、論理的整合性の矛盾を昇華したり、一文字の増減で作品の質を変えたりと、無限の提案ができる。 後者のほうが向いているのかとずっと思い込んできたが、実は、前者は前者でちゃんとできるひとが少ないような気が、勤続10年にして、してきた。 個人の適性にも好みにも関わらず、ほかにできるひとが少ない作業というのは、相対的にマシなひとんとこへ行く。やだなあ。注意深くしていれば誰にでもできることだっつうのに。 ……その注意深くが誰にでもできないのか。なんかガマン大会みたいだな。 それにつけても職場が寒い。社長がどたどたと走っておいでになると、風圧が衣類を透過してそれだけで寒いから走んないでほしい。 ただし温度計で確認すると20度ある。たぶん私のがわの問題だ。 寒いのはまあガマンするとして、腹を冷やすのだけはマズかろう。最悪、「なんか適当な理由つけてゲラ持って帰宅」を選択肢に入れねばならないのかと、そのための調整と段取りのめんどくささにうんざりしていると、幸いデスクに去年のカイロがあった。 おなかに貼って、あとはガマンすることとする。 たしかにメガネドラッグで作ったと思ってた眼鏡がメガネスーパーので、てっきりメガネスーパーで作ったと思ってたコンタクトが協栄コンタクトのだった。
……ことが、コンタクトを作りに行ったメガネスーパーで露見した。赤っ恥。 にしても店員の兄さんも、データベースに名前がないのはそりゃ私のせいだが、お互い突っ立ったまんま無言で数分かけて探したあげく、「受付は13時からになります」はないよなあ。まだ12時にさえなってないんだから、そっちを先にしゃべってくれえ(こっちはあらかじめ営業時間を調べてから出向いたものの、そもそも店を間違ってたので何をか言わんやだ)。 対照的に、協栄コンタクトのお兄さんは、いかにも熟練のプロという感じのかただった。店の名も場所もうろ覚えのままなのに、話をしていたら、そういや前回もこのかたにお世話になったということだけが思い出されてくる。 勧められるままに、1日使い捨てタイプのコンタクトから、2週間タイプのものに買い換える。基本眼鏡の生活から、基本コンタクトの生活を目指す。なぜって、赤ちゃんに頬ずりしづらかったり、お手々で眼鏡をべたべた邪魔くさがられちゃ嫌だからだ。 あさって胎芽の心拍が確認されるまで、出産準備に類することは何もすまいと決めていたけど、ちょっとだけフライングした。 バランス上、あさっての朝は、好きなスパークリングワインを冷やしてから病院に行くことにする。で、だめだったらそれを楽しみに、一日過ごす。
たしかにメガネドラッグで作ったと思ってた眼鏡がメガネスーパーので、てっきりメガネスーパーで作ったと思ってたコンタクトが協栄コンタクトのだった。
……ことが、コンタクトを作りに行ったメガネスーパーで露見した。赤っ恥。 にしても店員の兄さんも、データベースに名前がないのはそりゃ私のせいだが、お互い突っ立ったまんま無言で数分かけて探したあげく、「受付は13時からになります」はないよなあ。まだ12時にさえなってないんだから、そっちを先にしゃべってくれえ(こっちはあらかじめ営業時間を調べてから出向いたものの、そもそも店を間違ってたので何をか言わんやだ)。 対照的に、協栄コンタクトのお兄さんは、いかにも熟練のプロという感じのかただった。店の名も場所もうろ覚えのままなのに、話をしていたら、そういや前回もこのかたにお世話になったということだけが思い出されてくる。 勧められるままに、1日使い捨てタイプのコンタクトから、2週間タイプのものに買い換える。基本眼鏡の生活から、基本コンタクトの生活を目指す。なぜって、赤ちゃんに頬ずりしづらかったり、お手々で眼鏡をべたべたされたら嫌だからだ。 あさって胎芽の心拍が確認されるまで、出産準備に類することは何もすまいと決めていたけど、ちょっとだけフライングした。 バランス上、あさっての朝は、好きなスパークリングワインを冷やしてから病院に行くことにする。で、だめだったらそれを楽しみに、一日過ごす。 9か月ぶりの美容院。「次は春には来てください」と念押しされる。
5年くらい前からお願いしている美容師さんには、同い年の親近感がある。たしかあっちが4日お姉さん。 昨年結婚されたばかりの新婚さんでもあり、「ピーコックは高級スーパーか」「池袋発で、地元では浜町と水天宮にあるチェーンの八百屋がアツい」など、ことさら主婦トークになる。 そんなことを毎日しゃべっていたら飽きるのだろうけど、平生しゃべる相手がいない話題だから新鮮なのは、さいきん店長からマネージャーへと昇進された彼女にしても、同じなのかもしれないという印象を受けた。 ちょっと幸せ太りをされたかなあと思ってたら、自分でも気にしてらした。 以前に早く子どもが欲しいと言っていたこともあるから、こんど春に会うとき、「私も34歳で4、5kg太ったと思ってたら妊娠したから、そういうことなんじゃないか」という話ができるようになればいい。 今の状態は中途半端きわまりない。 明後日に行く病院で胎芽の心拍を確認できたら、それ以前は15~20%である流産率が、統計上は5パーセントにまで下がるという。 と、いうことは、現に妊娠検査薬で陽性を確認して、超音波撮影で胎のうをその目で見たあと、「残念でした」となるひとがけっこうな確率でいるということだ。 ひとむかし前、「おかしいなあ」「気のせいだったかなあ」と思うしかなかったころは、「自然現象」で済んでいたのかもしれないけれど。 あれこれ考え合わせると、今の状態は、むしろ妊娠していると言っては過言ではないかとさえ思う。 こんなに眠いのにね。 4時間かかった美容院でうとうとして、帰りの電車でまた寝て、帰宅後18時過ぎから3時間も寝ちゃったと思ったら、次に目が覚めたのはさらにその2時間後だった。で、3時間後にはまた寝始めて朝まで起きなかった。 私に昼寝の習慣がいっさいなかったことを、いちおう書いておく。 18:30、不意に仕事が途切れた。稀なことで、どうしていいか分からず、とりあえず家人に連絡を取ると、
「何か月ぶり?」 と訊かれた。覚えていない。もしかしたら、月ではなく年のスパンかもしれない。 「これが終わったら急ぎの仕事はないな」とは、無論思っていた。思っていたけど、金曜の午後なかんずく夕方以降は魔の時間帯だ。 版元様より、大定番の「今(金曜夜)お渡しして月曜の午前中に頂けないか」に始まり、「ゲラが出るのが明日(土曜)になってしまうがどうすればいいか」、「土日は御社はお休みとうかがっているがやはりそうか」など、取りようによっては恫喝とも取り得るようなお電話がある。 「これ終わったら帰れる、明日はお休み~」と舞い上がっていたら、これらのお電話をにこやかには受けかねるはずで、そんな事態を防ぐには、心に麻酔を一本射っとけばいい道理である。 というわけで、今週末は、ほんものの土曜日でほんものの日曜日だ。先週も先々週もみっちり仕事があった。その前の週は違ったけど、ごろごろしてたら家人に、 「こうやって過ごすの、久しぶりな気がするなあ。なんでだろ?」 と言われた。いやん風向きが怪しいわ、と思っていたら、 「あ~、(ヨメの私が)ずっと仕事ばっかしてたからだ!」 と、自ら正解にたどりつかれた。 愚痴っているわけではない。 「だから今日18時半に帰るからって、いっさい後ろめたく思うな!」 と言っている。 それにしても急に気温が下がった。だからといって、仕事中脚が冷えるのには閉口した。 だってまだ10月だろ!? 今まで真冬だって、膝かけの類いなど使ったことがないこの自分が、ジャージ出してきて下腹部から腿をつつんだり、している。週末に潔く買うか、人生初膝かけ。 はたまた喫茶店に行こうとすれば、ドトールのホットドリンクは全品もれなくカフェイン入ってることに気づく。まあ、コーヒーショップだしなあ。といってもスタバにはディカフェがあるが、もともと私だって、堂々とタバコを吸えるからこそ通ってたドトールだ。そういう店じゃないよなあ。 面倒な話だが、半年前の自分と今の自分とは、別人と思っていこう。 イチオシはフレッシュネスバーガー。カフェインレスの中で選択肢が存在するうえ、ホットドリンクでいちばん安価なのが「ベジタブルスープ(280円)」なのも素敵だ。行けない店じゃなくて、行ける店という視点で考えていこう。 社長から数か月ぶりに「あしたどう?」と言われて丸1日、ちょっとどきどきしてた。
この2週間弱、残業してない(持ち帰る)、自転車通勤してない、ズボン穿いてない。なにごとにも消極的(と自分では思っている)。加えて以前よりこの女性社長は、嫌味にならないよう気遣われつつも「子どもは……?」と小さく口にされたことが、しばしばある。 妊娠がバレてたときの対応は、いちおうシミュレーションしといた。 ぜんぜん違った。かますらかけらんなかった。これなら平気だから、もう安定期まで黙っとくことにする。 そんなこんなでお昼に小一時間を費い、夕方はコンサートを聴きに6時上がりときちゃ、いくらも働けないよ弱ったなと思いきや、やっぱり行ってよかった。いろいろ思うところの多かった頭と心を心地よくマッサージされるかのような演奏で、久しぶりに何も考えないことができた。誘ってくれた家人に感謝。 ギトリスのソロはあまりに奔放で初めはびっくりしたけれど――のっけからびっくりさせてくれるソリストというだけでもたぶん稀少だというのは後付けの理由で、たちまち引き込まれた。ヴァイオリンの演奏を聴かせてくれたというより、八十有余年彼の見てきた、知悉している世界の一角を、音楽を通して覗かせてくれたような時間だった。足もとが揺らぎ、絶妙な酩酊感とともに異世界に伴われてゆくような。 十月革命のたった5年前に生まれて7歳で初のコンサートを行ない、12歳でパリ音楽院を首席で卒業したという(同期の大人は立場ないよなあ)逸話をはじめ、世代も言葉も何もかもが懸け離れた人の歴史を、しばし旅することができたのは、音楽の力のおかげに違いない。 そうやって思いを遠くに飛ばしながらも、小さなことでくよくよする。 今までコンサートの始まる前や幕間には、家人とワインか何か楽しみ、終わったら終わったで遅い夕飯をというよりお酒とおしゃべりを楽しんでいた。 それはもう過去形で書かれなければならないのかな。つまんないやつと思われたら悲しいことだな。あの時間は失ってしまって本当にいいのかな。今が幸せだから余計なことを考えるのだろうけど。
「ヨクイニン」ってなんのことだっけ。
昨日ぐらいから気になってた。 たしか漢方薬の一種だったと思うが、それ以上のことは分からない。 もっと分からないのは、どうしてそんなことが気になるのかだ。基本どうでもよくね? ……浅野いにおの『ソラニン』を、もっぺん読みたいと思ってたこととは関係あるのかな。 いやいや、ソラニンの「ニン」って、シアニンとかストリキニンの「ニン」だろ。漢方薬だっつってんじゃん。 むしろ杏仁豆腐の「ニン」か。種子。 そこまで考えてもまだ思い出せない。 しぶしぶググった。 ハトムギの種子のことだった。そう言われてみればそうだったかな。 補足として、大量摂取すると流産しやすくなるという説があるんだそうな。 ハトムギ。はとむぎ? 私が常飲してるのって、麦茶は麦茶でも「発芽はとむぎ茶」。 えええええええええ! すごいな、人間の記憶力って。この情報はいつかどこかで視界に入ってて、覚えてないけど私の中にあったんだな。 で、なんで「ヨクイニン」ってキーワードにしたのか、これは腹に向かって訊いてみたりする。 麦茶って良い意味で、毒にも薬にもならんもんかと思い込んでたよ……。
ライトノベル系新人賞の痛ましさは、受賞者の世代のなかで23、4歳という層が極端に少ないことにある。21、2歳を過ぎたら、あとは25歳以降にスキップしている場合が多い。
23、4歳――執筆段階で22、3歳の文系青年たちは、我が身の振り方で手一杯なのか。 日本では徴兵されることがないから、社会における通過儀礼的な側面を、企業による新卒採用が代行しているという説がある。この説に基づけば、就職しそこねることは即ち社会の一員になりそこねることであり、当人にとって一大問題となるのは無理もないところだ。 「内定取消」問題が何故しばしば悲愴な論調で語られるのか、四年制大学に5年半いて就職活動したことのない私にさえ、この説に基づけばおぼろにだが解ってこようというものである。 だからといって、23、4歳の受賞者の、この少なさはどうなのかな。書き手に余裕があれば書かれる、というのがライトノベルの本質なのかな。余裕がないときほど生み出される種類の文章もあるはずだけど。 25歳の新人さんを驚かせないように、丁寧にゲラに手を入れながらそんなことを思う。この新人さんのブログをチェックしたら、読んだ本とやったゲームのことしか、ほとんど書かれていないのだ。 そのようなブログであると決めているのならそれでいい。ただ、たまに外出したときには、その旨が書かれている。 私はきみが心配だ。 昨日あたりから急に日中の眠気が去り、半透明の膜を隔てて世界に接しているような感じも消えてきた。そのことを、昨日はありがたいと思っていたが、今日になるとむしろ当然と思えてきた。どっちにしても、すぐ馴れるんだな。
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