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困るほどではないが離人ぐせがあって、ときどき愉快な体験ができる。 右利きの人は大体、デスクワークのとき左手を机の上に乗せていることと思う。このとき、無意識のうちにその左手が自分のものであることを了解している。 ところが離人というのは、自分の体が自分のものでないような感覚になることで。 疲れてると、自分の机の上に誰かの左手が転がってる、という認識になる。これはもう、思わず叫びそうになる程度にはびっくりする。 コレが離人症状として一般的なのかどうか知らないが、私の場合はまずコレから始まるから「お、離人さんが来たのか」と思って、以後なにが起きても驚かない目安にできて便利だ。 ……先週の木曜、雑誌の進行が一段落したあとから、なにかおかしかった。 仕事の段取りが、私じゃない。 打つべき手を打ってないし、優先順位もおかしい。 自分で立てて自分で実行してる企画なのに、完全にひとごとの姿勢にしか見えない。 人と会うと、なんで人が私を私と認識できるのか不思議でしょうがない。 寝言は寝て言うもの。 「コレは私じゃない」と言わざるを得ないことは非常に不本意だが。 うーん、ICD-10にも書かれていよーかというほど典型的な……。 しかしなあ。 左手、なんともないよ。 ……私が私であろうとなかろうと大した問題ではなく、すべき仕事があることだけ現実だ。 中学生のとき確立したメソッドを試してみる。 「座って」。「その書類を取って」。「その字を辞書で引いて」。 1つ1つ、端的に、具体的に。 おお、コントロールが効く。 思い出した。 ……この仕事。うちの社長が筆舌に尽くしがたい愚かな進行ミスをして、そのために私の作業量が度しがたいほど増え、しかもそれによる欠陥は、この仕事を続ける限り付きまとうものだった。 そうだ、生まれて初めて職場でマジギレしたあげく早退したんだった。 そのあとS先生の仕事が入ったり、旅行に行ったり雑誌の進行があったりで、忘れてた。 しかし、よくそんな事件を忘れてられたな。侮りがたし離人さん。 疑問が氷解するや、一転、はらわたが煮えたぎってきた。 あーあー、コレは怒るわ、私。私がいちばん嫌いなタイプのミスじゃないか。 もてあますほど生ま生ましい怒りが蘇ってきた。お帰り私、仕事が待ってるよ。 要は、左手から始まる離人が疲労から来る一過性のものであるのに対し、今度のはこの記憶から退避、またはこれを抑制するためのものだったのか。 スッキリした、分析終了。 明日からの生活はもう少し快適で合理的になるだろう。
by tokyo_ao
| 2005-05-18 20:10
| つれづれ
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