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『浅ましい姿も恥ずかしい姿も、今はすべてさらけ出せる。宗近を無心に欲しがる素直で淫らな自分を、心のどこかで愛おしく思っているからかもしれない』
……ソレは、さらけ出せなくていいのではないか。 あと、愛おしく思わないほうがよくないか。 素朴に突っ込んでしまう読者にとって本書は難解なテキストだ。実際、BL読書13冊目にして、初めて再読した。おもしろくて再読するなら読者冥加だが、ちがう。 「どうしてそうなの」「なんでそうなるの」という疑義が多すぎるからだ。すべて保留にしながら読み進めていたら、保留のままに読了して唖然とした。 再読して、ようやく得られた本書の主旨は、「極論」。 たとえば上記引用にしても、「さらけ出していいのかもしれない(この人の前なら)」、「(こんな自分を)認めてもいいのかもしれない」、くらいのニュアンスにしてはどうか。そうすれば、より多くの読者の共感が見込まれ……ないのが、2006年の現実だ。 BL分野の売り上げランキングを丹念に見ていくと、いかに当該ジャンルが売れ筋とはいえ、少数の作家による寡占状態であることは否めないことが分かる。英田サキによる全4巻のランキングを、amazonの敢えて総合ランキング(本)で見てみる。 第1部(本書)…975位 第2部-咬痕- …4929位 第3部-裂罅- …2125位 第4部-残光- …660位 (以上、2006年11月30日現在) ……いくら完結編である第4部の発売直後とはいえ、この高順位はなんなのか。腐女子しか買わないのにさ。 版元である大洋図書さんと同じくらいの知名度をもつ出版社で、1冊amazon3ケタを叩き出したら、その担当編集さんがどんなに自由になれるか生憎じかに知ってる。 というか、道理で住所に見覚えがあるような気がしてたら、日ごろお世話になっております版元さんと同一グループだった。 私が校閲させていただいた本は、6ケタだった。企画の段階で請け負ったべつの版元さんの本も、6ケタだけど。まずは今後、提案型の営業を心がけさせていただきたいと思う。 ただ、本書の口絵は非常に恥ずかしい。りっぱなエロ本。町の本屋さんでコレ1冊、領収書を貰わずに買えるかと問われれば、買えない。罰ゲームだったら浮世の義理で、買う。 amazonで買いたくなる(通販でしか買いたくない)気持ちも、分かる。 だれが買ってるんだよという、恐ろしさだけが残る。 これだけ売れてるので、きちんと全4冊買って、次は逃げないレビューを心がけます。
by tokyo_ao
| 2006-11-30 01:19
| 無謀/BLを総括する
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