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『どちらが抱く側になるかを賭けた、先にイカせたほうが勝ちという勝負では、既に二度も負けている』
上記引用はつまり、男同士でセックスするにあたってのことを言っている。どちらがどうという役割が決まっていない間柄では、それは恐らく大変な問題なのであろうと拝察される。 性的にありふれた嗜好の持ち主にとって、単に「セックスする」といえば、自分が何をすればいいのかは、ある程度自明だ。処女や童貞だって大概想像はつけているだろう。 以上を鑑みるとき、直截な表現で誠に申し訳ないが、「入れる」「入れられる」という根本的な点について不分明な欲望の形というものが、わからない。そこまで具体的なイメージを欠いたまま、純粋なセックスへの願望というものは、存在し得るものなのか? 以上の疑問は、驚くべきことに、本書のオビに書いてあった日本語3文字で氷解する。 「攻×攻」 ……それは、BL小説において既にジャンルとして確立されているシチュエーションらしい。と見做した根拠については割愛するけど、そうらしい。そうなのだ。 現実世界において、酷くマイノリティでレアでマニアと思われるその世界を、僅々3文字で表現し得る日本語は偉大すぎないであろうか。 この表現を目にしたとき、想起されたのは、生来全聾の子供らの話だった。手話も口話も教えられなかったとき、その子供らは、多く独自の「言語」を生み出すという。 つまり言語は本能であると、これらの論文は言う。 私はこの子らの伝えたさ、もどかしさ、わけのわからない(であろう)悲しみ、孤独、努力、とりわけ傷だらけの努力を思ったとき、肺臓を揺すぶられる。ただし言語とはとても偉大な存在でありつつ、思想が必要としたときはいつでも生まれ得るオンデマンドなブツに過ぎない、こともまた覚える。 はなしが重くなっちゃったんで「攻×攻」に戻りますが、このお話は第2弾で、恐らく続くらしいです。責任はとります。
by tokyo_ao
| 2007-01-04 22:48
| 無謀/BLを総括する
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