夜は飲みつつ料理三昧(禁酒やめた)


34歳兼業主婦出版系
by tokyo_ao
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Lesson19.『蜘蛛の褥』

『それなのに、神谷はこの男との関係を壊さないために、自分に身を投げ出した。この男への想いを抑えるために、みずから進んで恥辱的なセックスに耽ったのだ』

 これら2つのフレーズから窺えるのは、「神谷」と「自分」との横溢する切なさと、本当に欲しいものには手が届かない懊悩と。「この男」を含めて3人ながら男性である。
 いま、急激に間口が狭まったな。

 本書には嗜虐と被虐とのたゆたいが通奏低音として常に流れつづけ、しかし緊縛や鞭は登場しない。「痛いのはイヤ」だが精神的なソレを求める、意外とオーディナリーな層にも、安心してお勧めできる一品と言えよう。
 (どうして三十女が同窓会したら、往々にしてSかMかの話にナチュラルに入る流れが存在するのか? なお卑近の実感)

 ……この安心感を支えるのは、冒頭の「それ」を支える説得力だ。
 それ、あの、という、こと、いずれも便利な承前の指示語だが、これらが有効に機能するか否かは、前もってどんな材料が用意されているかに懸かっている。  

 精神的Mを担当する主人公・神谷のもつ違和感は、恐らく世間にありふれたものだろう。
 自身に対する、故のない「からっぽ」感。少年期に実父を失い、義父と妹とを受け入れざるを得なかったことの屈託。たしかに実父を早く失うことは稀ではないにせよ、その失い方にあった、個人的な蹉跌と悔恨。

 これらは伏線として扱われているが、決してあからさまではない。読者に対し、「何かある」と思わせつつ「いつか語られるだろう」と間を持たせ、最終的に「語るのを待つ」モードに持っていくためには技量が要る。

 本書はその技量を満たしている。ただし口絵は下品だ。へたしたら、このLesson19まででいちばん下品だ。
 「安心してお勧めできる」って、いま、取り消してもいいですか。
 
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by tokyo_ao | 2007-01-13 02:45 | 無謀/BLを総括する
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