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最近、職場では携帯の忘れ物が多い。と言っても、ウチはお店でも駅でも学校でもなく、編集プロダクションなので、ゲラの上でのことだ。 現場に落ちていた携帯の謎。 携帯の入った鞄を盗まれた被害者が、携帯から通報しているという謎。 通り魔的な殺人のはずなのに、被害者の携帯が盗まれていたという謎×2。 そしてそれらの謎すべてが、放りっぱなしのまま大団円を迎えるという最大の謎。 忘れられた携帯は、寂しい。 ぽつん。 携帯はべんりだ。被害者の携帯さえあれば、身元の割り出しは楽になるし、交友関係の聞き込みにも大活躍。着信履歴とリダイアルで、当日の行動まである程度明らかにできる。捜査陣、にこにこ。ミステリ作家、むかむか。 だから紙の上には、携帯のない死体がけっこう多い。「何でないのか」、その創作上の必然を、いかにして構成上の必然にもっていくか。それが、作家さんの腕の見せどころ。……のはずなんだけど。 忘れるよね、忙しいんだしさ。 それに、作家のファンタジーを披露しようと思わなければ、そんなのは2行で済む。論理的に整合性がとれていればよいのだから、作家的な力量は必要ない。 上記の謎は上から順に2行ずつで解いた。 「携帯は、私(犯人)の店の忘れ物で、交番に届けるつもりでしたが、もみあったときに落としたのでしょう」←忘れてったのがたまたま被害者。50点かな。 「息を吹き返すのではないかと恐れて現場に戻り、携帯を握り締めたまま絶命している被害者を見て、ゾッとして携帯を鞄に押し込んだという」←後付けにしては70点は欲しい。 「加害者は少年でもあり、芸能人(被害者)の交友関係に好奇心を覚えて(携帯を)盗んだものであろう」←初期設定(芸能人)の利用バージョン。ちょっと説明調なので60点。 「金にならない携帯を盗んだのは、若い女性の私生活に興味があったからと認めた」←上のネタの使いまわし。作家以外の人に「変態」にされた犯人が哀れで40点。 ……でもね。 もう、ネタないよ。 どうしよう、また通り魔が携帯盗んでったら。あと、ストラップがレアなブランド物でそっちが欲しかった、くらいしか思いつかない。ぜんぶ違う作家さんだから、ネタを使いまわすことに倫理的な抵触はないんだろうけど……。 いっそ、「親友」つくってみっか、ガイシャに。 自分の携帯をなくした被害者が、親友を拝み倒して、電話帳データをコピーさせてもらってるのだ。その間に事件に巻き込まれ……。 「親友」は女子高生がいいな。自分の携帯メモリをコピーさす関係性って、会社支給の仕事専用でもない限り、許されるのはそのくらいだろ。 でも、やっちゃう。次に携帯忘れた作家さんの作品に、もれなくやっちゃう。 ガイシャがおやじでもやっちゃう。携帯メモリをコピーしあうおやじ。べつのファンがつくかも。 さあ忙しい作家さん、消えた携帯のことなど安心して忘れてください! 今ならもれなく、ガイシャに親友がついて校正上がってきます。 (上の例は、そのまま出版されるわけではありません。著作権と社会人生命(私の)の都合上、アレンジしてあります)
by tokyo_ao
| 2004-11-08 20:06
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