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またウチの会社に、アンダーシックスティのバイトさんが来る。 16じゃない。60だ。 「年齢不問」で3行広告を2度打っただけで、職がない人が40人も履歴書をくれるのだものな。 いま自社企画の本を作っているのだが、企画自体が私の妄想なのかという妄想が湧いてくるほど、自社からのフォローがまったくない(足を引っ張られたことは、ある)。 もうグレるか逃げるか、企画と私を抱き合わせてヨソ様へ売るかしようと思っていたけど、世間の水はカラいのだな。たぶん。 入社試験の答案を見せてもらう。 ――うーん、こんな出来のいい答案は初めて見た。去年入った50歳の新人さんも怖いほど優秀だったが(cf.10月27日のブログ)、その上を行く。 もっと怖い。 こんなに頭のいい52歳の男性が、なぜウチのような零細企業の短期アルバイトに応募してくるのか。 ――「この世には、不思議なことなど何もないのですよ」というくらいですから、なにか理由があるのでしょうね。あまり人界の暗部を見るのは好みませんが。 履歴書を見せてもらう前に。 社長 「先に言っとくけど、こんなこと言っちゃいけないんだけど、……ホームレスの人みたい」 それは、たしかに言っちゃいけないな。だいたい社長も私も、ひとのルックスをどうこう言えたガラじゃない。 私 「拝見します」 ……「ホームレスの絵を描け」と言われたら、私でもこんな感じに描くわな。 もしくは北京原人。 私 「最高学府の理系出身でらっしゃるんですね」 社長 「でも、職歴はずっと校閲……」 私 「というか、会社名が1つも記載されてませんね」 社長 「定職についたことがないんじゃないかな」 私 「電話番号の記載もありませんね」 社長 「電話、ないんですって」 私 「どうやって採用連絡したんですかっ」 ……聞けばこのJさん、ここ4日間ウチの会社に日参してたそうだ。 1日目:Jさん 「採用について質問があったんだけど、今の電話聞いてたら済みました」 2日目:Jさん 「履歴書もってきました」 3日目:Jさん 「履歴書に、写真を貼るのを忘れました」(←なくもがなの写真だがな) ボス 「入社試験を受けていただきたいんですが」 4日目:Jさん 「どうなりました?」 ボス 「月曜から来られます?」 しかし、私も私だな。どうやったらこんな目立つひとに、気づかずにいられるのだ。試験と面接って、私の斜め後ろ1.5メートルの机でやってるのに。忙しくても、次から会釈くらいしよっと。忙しさによるけど。 社長 「でもね、ご本人も気にしてるみたいで」 私 「電話ですか」 社長 「ううん、ヒゲと髪の毛。なんか、 『ムサ苦しくてすみませんね、月曜には刑務所帰りみたいにスッキリさせて来ますから』 とか言っちゃって」 私 「ああ、――ちゃんと自覚も自重もできるかたなんだ」 社長 「よかったね」 私 「助かりますね」 だって、潔癖症なのだもの。社長が「ウチの両エース」と勝手に呼んでるうちの1人って。 ――あれ? でも、「刑務所帰りみたいに」って。 それって、だめなんじゃ……。
by tokyo_ao
| 2005-06-02 20:04
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