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これだけ下品なブログをつけてて今さらあれだが、プランタン出版(フランス書院文庫)の口絵は下品すぎると思う。本を手にしてまず口絵が目に入り、びっくりとげんなりが綯い交ぜの気分で、思わず本を置いてしまう。びっくりとげんなりは緩急の差がある感情で、あまり綯い交ぜにはならない道理なのに、きれいに綯い交ざる環境もあることを知った。
しかも、「少しずつでもいいから、毎日時間をとる(BL読書にな!)」と決めてたから、「今日は1ページも読んでないよ、どうした私」と、思った。 そして本を手にしてまず口絵が目に入り……、以下繰り返してしまった。嫌な記憶は速やかに消去されるという都市伝説は、本当らしい。 けど最近BL読書が進まないのは、なにもプランタン出版の口絵のせいじゃない(いばるな)。 学術情報冊子と映画のノベライズ、啓蒙書とライトノベルとハリウッド映画原作を、1週間で校正する羽目になったからだ。ターミナルケアで日中合作で、自己啓発で学園秘密結社で全米が泣いた1週間だった。 病気になるかと思ったら、なった。自分の感受性にちょっと信頼が増した。 ただ1つ不安なのは、忙しいといっても活字だけ読めばいいので人間からずれていく気がする。3番目に片づけた「啓蒙書」に、小学3年から15年以上引きこもっていた男の子が、人知れず統合失調症を発症していた事例が載ってた。怖くなった。 先々週、高校生くらいの男の子がじっと私を見ているような気がした。「なに見てんだよ?」と見返して、一瞬目が合って、彼は何かあきらめたように視線を逸らした。 もしかして、前日に道を尋いてきた男の子なのかと、やっと心づいた。 いや尋いてきたのじゃなく、正確には彼が二十歳くらいの女の子に、「すいません」「すいません」を激しい調子で繰り返していた。単に「すいません」のあと、たぶんトで始まる言葉を続けようとしてつっかえてるだけなのだが、状況を理解できない女の子はおびえていた。 ちょうど校閲した雑誌に、「吃音が取りもつ縁」と題するページがあって、「ふたりともトロが食いたいのに言えないからイカばかり食ってた」というフレーズが頭に残っていた。 「トイレですか?」と、念のため尋いてみると、絶望的な目をされた。 ――そうよね、この年頃の男の子が、トイレの場所をうら若い女性に尋くまい、残酷なことを言ったよ――とそこで閃いて、「東京××専門学校」と言ってみたら、「東京××専門学校は、あっちのほうですか?」と。 しかし私はヒトの顔を覚えるのが本当に苦手で、昨日のあの子が今日のこの子かなんて考えると、「天文学的数字」とかいうタームが浮かぶ。結局その子を無視した。 そして先週、財布を拾ったら近所の学校の学生証が入ってた。届けに行ったら、入り口のあたりで、しかめっつらの女の子がバタバタ走ってた。 学生証の写真の子と、似ているかもしれない。私には判断できない。 事務所に届けてエレベーターを降りたら、やっぱりその子が走り回っていた(←この場合は服が同じなので判別できる)。 鋭いさげすみか感謝の念か知らないが、私に向けたかった男の子と、泣きそうになりながら財布を探し回っていた女の子。しかも両方とも私の妄想かも。ちゃんと顔を覚えられる人間だったらと、つい思ってしまう。 とりあえず年内には検眼に行こう。
by tokyo_ao
| 2006-11-22 02:42
| 無謀/BLを総括する
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