夜は飲みつつ料理三昧(禁酒やめた)


34歳兼業主婦出版系
by tokyo_ao
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カテゴリ:無謀/BLを総括する( 25 )


Lesson番外2.プランタン出版と相貌失認の疑い 

 これだけ下品なブログをつけてて今さらあれだが、プランタン出版(フランス書院文庫)の口絵は下品すぎると思う。本を手にしてまず口絵が目に入り、びっくりとげんなりが綯い交ぜの気分で、思わず本を置いてしまう。びっくりとげんなりは緩急の差がある感情で、あまり綯い交ぜにはならない道理なのに、きれいに綯い交ざる環境もあることを知った。

 しかも、「少しずつでもいいから、毎日時間をとる(BL読書にな!)」と決めてたから、「今日は1ページも読んでないよ、どうした私」と、思った。
 そして本を手にしてまず口絵が目に入り……、以下繰り返してしまった。嫌な記憶は速やかに消去されるという都市伝説は、本当らしい。

 けど最近BL読書が進まないのは、なにもプランタン出版の口絵のせいじゃない(いばるな)。

 学術情報冊子と映画のノベライズ、啓蒙書とライトノベルとハリウッド映画原作を、1週間で校正する羽目になったからだ。ターミナルケアで日中合作で、自己啓発で学園秘密結社で全米が泣いた1週間だった。
 病気になるかと思ったら、なった。自分の感受性にちょっと信頼が増した。

 ただ1つ不安なのは、忙しいといっても活字だけ読めばいいので人間からずれていく気がする。3番目に片づけた「啓蒙書」に、小学3年から15年以上引きこもっていた男の子が、人知れず統合失調症を発症していた事例が載ってた。怖くなった。

 先々週、高校生くらいの男の子がじっと私を見ているような気がした。「なに見てんだよ?」と見返して、一瞬目が合って、彼は何かあきらめたように視線を逸らした。
 もしかして、前日に道を尋いてきた男の子なのかと、やっと心づいた。

 いや尋いてきたのじゃなく、正確には彼が二十歳くらいの女の子に、「すいません」「すいません」を激しい調子で繰り返していた。単に「すいません」のあと、たぶんトで始まる言葉を続けようとしてつっかえてるだけなのだが、状況を理解できない女の子はおびえていた。
 ちょうど校閲した雑誌に、「吃音が取りもつ縁」と題するページがあって、「ふたりともトロが食いたいのに言えないからイカばかり食ってた」というフレーズが頭に残っていた。

 「トイレですか?」と、念のため尋いてみると、絶望的な目をされた。
 ――そうよね、この年頃の男の子が、トイレの場所をうら若い女性に尋くまい、残酷なことを言ったよ――とそこで閃いて、「東京××専門学校」と言ってみたら、「東京××専門学校は、あっちのほうですか?」と。

 しかし私はヒトの顔を覚えるのが本当に苦手で、昨日のあの子が今日のこの子かなんて考えると、「天文学的数字」とかいうタームが浮かぶ。結局その子を無視した。

 そして先週、財布を拾ったら近所の学校の学生証が入ってた。届けに行ったら、入り口のあたりで、しかめっつらの女の子がバタバタ走ってた。
 学生証の写真の子と、似ているかもしれない。私には判断できない。
 事務所に届けてエレベーターを降りたら、やっぱりその子が走り回っていた(←この場合は服が同じなので判別できる)。

 鋭いさげすみか感謝の念か知らないが、私に向けたかった男の子と、泣きそうになりながら財布を探し回っていた女の子。しかも両方とも私の妄想かも。ちゃんと顔を覚えられる人間だったらと、つい思ってしまう。
 
 とりあえず年内には検眼に行こう。
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by tokyo_ao | 2006-11-22 02:42 | 無謀/BLを総括する

Lesson12.『寒冷前線コンダクター』

 『すみませんでした…。こんなことは二度としません……誓います』

 前回とりあげた『おうちのルールで恋をしよう』(←男どうしのセミ近親相姦に萌える本)は、オビが「愛してる、俺の可愛い父さん(はぁと)」だった。男性が一生言われたくないセリフとして、かなり高位につけると拝察する。
 それに対して、本書のタイトルは実に健全だ。オビは付いていなかった。

 「2006年現在の売れてるBL」を読んできたが、今回からしばらく「売れてるBLシリーズの第1作」を読んでいく。本書の初版は、今から12年前の1994年。BL小説のタイトルが一般に、まだあられもなくならない時代の発行なのだ。
 そして神田の三省堂本店にふつうに並べてあったのは、2005年6月30日発行の19版。強姦から始まる男どうしの恋物語らしいのだが、立派なロングセラーとなっている。

 本書が初の文庫化だという作家・秋月こおは、斯界の金字塔『JUNE』誌からデビューしている。当時連載していた中島梓(栗本薫)の「小説道場」で、腕を磨いていたそうだ。
 なお第1回でとりあげた吉原理恵子は、『小説JUNE』創刊第2号(1983年)が商業誌の初出であり、いまだにトップセラー。その記録には及ばないものの、だいたいこの人たちの足跡が、そのまま日本のBL小説の歩みと言っても過言ではないだろう。

 そんな秋月こおが選んだのは、指揮者とコンマスのカップリング。この設定の妙が、ロングセラーの秘訣だろうか。だって職業に貴賎は無いとはいえ、どっちが男役だか、わかりやすいことこの上ない。というか、「下克上」――萌えカテゴリの一種として、既に実在するらしい――が好きな人以外には、指揮者という職業の属性は、考えてみればあからさまではないだろうか?

 それに対するコンマスは、メガネ。
 この時代、メガネはまだ「平凡」や「まじめ」の記号として機能していたことを窺わせる。のちの「クールビューティー眼鏡受け」(from『恋は淫らにしどけなく』)、果ては「眼鏡をかけた男をウリにした」(from『今宵、眼鏡クラブへ。』)まで至る道筋が、見えない。

 メガネ問題と体臭問題、姫問題や皇帝問題など、読み解くべきサブカテゴリが無駄に増えてきた気もする。今の私に出来ることは、1つ1つを無念無心に解決していくことだけだ。

 それより何より問題なのは、本書がそもそも雑誌連載の文庫化であるという事実だ。早い話がこの話、ぜんぜん完結していない。いや、シリーズ物であれば完結していないのは当然だが、文庫書き下ろしのスタイルに慣れてしまった読者としては、これは辛い。  
 主人公の2人が「友人」に戻って、本書は終わる。男が男に強姦されてソレはありえない、以上に、物語の構成としてありえない。

 だからBL専門の古本(通販)屋に、会社名義の領収書を出してもらえるのか、問い合わせ中。あ、コレがロングセラーの秘訣の一環か。
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by tokyo_ao | 2006-11-17 01:11 | 無謀/BLを総括する

Lesson.11『おうちのルールで恋をしよう』

 『安心しろ、たぶん天国にいるだろう母さん。浩一郎は俺が幸せにする。俺が幸せにしないで、一体誰が幸せにするんだ?』

 上記引用は、主人公(男役のほう)の独白。
 1文目の「母さん」は、主人公の実母。
 2文目の「浩一郎」はその2番目の夫で、主人公にとっては義父に当たる。
 3文目の主張がいかに間違ってるか、よくわかると思う。

 そしてこれが義父ならぬ義母(29)と息子(20)では、官能小説のベタな設定になってしまう。一方、義父(29)と娘(20)なら、まぁ何かなまぐさいが当事者がいいならば程度のしめっぽい幸せしか漂わない。

 ココに「男どうし」を持ち込んだのが、作者の勝利だ。
 そう、売れてるBL読書、11作目にしてやっと、確信犯のコメディに巡り会った。

 確信犯とはたとえば、「BLはちょっと」と言うかたにも「ココまでなら」と許されることがままある、よしながふみ。以下代表作の『アンティーク』から。
 高校のとき告白したのに(男に)、付き合ってくれなかったのは、もう付き合ってる人(男)がいたからなの? と詰め寄る旧友(男)に対し、

 「男を一億総ホモにするな!」

 そう叫ぶ、主人公のいるさわやかさ。
 そしてハードな恋愛描写を本編では遠慮のうえ、同人誌で書くその分別(それがなければ、「月9の原作」という地位を得ることは無理だったろう、さすがに……)。この客観的な視線のあらまほしさ。

 いっそ本書を脚本に起こして、小林賢太郎に「やって」って直訴したい。男夫婦のネタをごく自然にこなしてくれるラーメンズ、似合うと思うなあ。しかも男夫婦だと必ず片桐仁が女役なのに、『タカシと父さん』とかだと「父さん」が片桐仁。
 ……ぴったりじゃないか! 

 とりあえず、この作者の今後を追ってみる。
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by tokyo_ao | 2006-11-09 00:46 | 無謀/BLを総括する

Lesson.番外1『おすもうさんとやおい』

 月刊誌は既に年末年始ということで、『鍋』特集の校閲中。
 「好きな鍋」として「ちゃんこ」を挙げるの、もぉ禁止!
 ちゃんこ調べるとなると、力士も調べる羽目になるんだよ。

 力士について校閲する傍ら、BL小説のブックマークをつくっていたから、私のデスクトップは男のハダカだらけだ。実写とイラストという違いはあるが。もっと違うとこあるだろ。
 今日いちばん見た色って、肉色だ。青いものとか見たい。

 替え歌つくった。

 (草野正宗『ホタル』で、サビの出だしから)
 
 時を止めて 僕のデスクが
 男の肌で 染まってゆくよ

 ……やってみたら100%不快になると判ってることほど、やってみちゃうのは何故だろ。結局Mなのかな。
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by tokyo_ao | 2006-11-07 17:34 | 無謀/BLを総括する

Lesson10.『姫君は海賊にさらわれる』

 『だって、ぼくは、いたいけな子供とセックスしたりしてないもん!』

 「皇帝もの」に引き続き「姫君もの」を読むという段取りだったから、トラブルをまったく予想してなかった。だって、一見似たよなジャンルと思っちゃだめなのか。

 ……まったく違った。
 そういえば最近、ホモの女役を「姫」と称する風潮があって、それに反撥する人も少なくないことを、ゆきずりのやおいサイトで読んだ。なに言ってんだ私。

 いわば本書は、「姫」系の極北だ。
 なぜなら、いっそ主人公が女性であっても差し支えないのではないかという突っ込みを超え、もう男性じゃなきゃ機能しない「姫」物語だから。

 主人公は、地球規模の大災害を経て生き残ってしまう。この大災害については、小松左京先生が10年かけて為遂げなさったことの128倍の規模が、冒頭の1ページで為ったと思って頂くといい。

 「どうして僕だけ生き残ったの? 僕も家族のところへ行きたい」と、まだ若いのに墓まで掘ってる主人公を、生きてる以上は生きろよと、海賊が無理やり助ける。「命の尊さ」がリピートされ、ちょっとイイ話だ。

 そして体調が回復するや否や、クルー全員の性欲処理係にされかかる。性別を不問に付したら、海賊としては非常に正しい。イイ話はどこ行った。
 この期に及んで主人公を女性にはできないと思う。なまなましすぎるわ。
 
 ……ここで謎なのは、主人公が17歳という設定だ。カバーイラストのみならず本文の記述からも、まだ性別が未分化な13歳くらいの子供を想定させられる。平成17年の統計によると、男女の平均身長が逆転するのが13~14歳だ。
 ただし、「17歳」というのは主人公自身にも実は曖昧で――被災後の年月を覚えていないから――、海賊に知らされて初めて、10歳で被災した自分がもうじき18歳になることを知るシーンは妙にリアリティがあってちょっと息が詰まる。

 このような仕儀で、べつに何歳でもいいからこそ、なぜ「17」という数字が出てくるのか。
 もしかして「高校出たらセックスOK」という、現代日本一部女子のお約束がここに息づいているのか。ちなみに本書では「17」のとき「いたいけな子供」として扱われ、「18」の誕生日を過ぎてのちに、処女というと語弊がありまくるがまあそうでなくなる。

 なんだこの潔癖さ。
 あと、本書のレーベル「プラチナ文庫」のサイトを恐る恐る見たら、これで今月の新刊4冊ぜんぶ読んじゃったことに気づいた。「プラチナ文庫」って、「プランタン出版」という版元のレーベルだが、実はあの「フランス書院文庫」とおんなじ会社のだ。

 どんな痴女なんだ。
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by tokyo_ao | 2006-11-05 07:21 | 無謀/BLを総括する

Lesson9.『皇帝は彼を寵愛する』

 『国と国の問題を出せば、我々がこうしていることが間違いになる』
 『私もあのひとのために祖国を、そして私の名誉を裏切ってしまったのです…』

 上記の引用は、片っぽが『敵国の皇帝×帝国軍人の官能ロマンス(はぁと)』とか表4に書いてある上掲書、もう片っぽが、今日家人に連れてってもらったオペラ『アイーダ』から。ヴェルディとウクライナ国立歌劇場と家人に謝れ。

 前日に続き「皇帝もの」を読む。
 「皇帝もの」とは、既にジャンルとして確立している「リーマンもの」などと異なり、私が勝手に言ってるだけだが、悪くないカテゴライズと自賛しておこう。同義で「王様もの」としてもいいわけだけど、皇帝のほうは絶滅種であるだけ、あり得ないという点で正確だ。外交上のプロトコールで日本国の天皇のみ現存する皇帝という解釈もあることは、この際あまり関係ないだろ。

 「あとがき」から読む。
 先入観のない読書を心がける上では邪道といえるが、前日の教訓を踏まえないわけにはいかない。そもそも真の読者であれば、ノーインフォメーションでもシリーズものであることくらい分かる筈。インフォメーションしてよという切願はさておき、いちげんさんが「なんだこの世界は!」と騒ぐのは見苦しい。失礼を避けるためにも、当面はこのスタイルでいく。

 時は明治末期、ただし(ロシアをモデルとした)架空の国が舞台なので、あくまでも借景、と。
 なんて安心感だ。
 45ページ、時間も場所も定かでないままゆらゆら読んでしまった、前日の教訓が生きている。

 安心しながら読んでいたら、「皇帝」は初手から「帝国軍人」に平手打ちを公衆の面前でかました。理由は、かつての幼なじみなのに覚えてない(ふりをした)からだそうだ。これは予測できなかった。そして16折(256ページ)中の34ページめで、早くも私室のカウチに押し倒す。

 『先に無礼をなさったのは陛下でいらっしゃる。我が大使館に所属する者を勝手に拉致なさるという暴挙は、国際法上、どう解釈したらよいものか』  

 主人公の上司である「大使」の抗議は、心情的にはしごくもっともだ。しかし国際法はそこまで面倒みなかろう。
 それとこの「大使」は仮装パーティーでみごとな女装を披露しており、駐在国の「外務大臣」と、たぶん既にできてる。

 ……「あとがき」によればこの話、「新シリーズというか、まだシリーズにはなっていないのですが(笑)」だそうだから、今後の定点観測の対象として、タイムリーな作品と言える。
 次作は年明けくらいかしら。たぶん読むよ。  
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by tokyo_ao | 2006-11-05 04:05 | 無謀/BLを総括する

Lesson8.『ダンディ・プリンス~一生に一度の恋~』

 『違和感なくドレスを着られてしまった自分の体が恨めしい。』

 本書のカバーイラストは、ウェディングドレス姿の男性だ。胸がはだけて乳首が出ているのは、「ウェディングドレスだけど男性」を明示するための苦肉の策だろう。レッスンの甲斐あって、だいぶ冷静にものが言えるようになってきた。

 この「ゲイの女役が女装」というのは、BL小説ではもう誰も突っ込まない「お約束」らしいのだが、個人的には違和感が残る。控えめに言って、「女装させるくらいなら女性でも差し支えないのでは?」という疑念が拭えないからだ。

 しかし本文を読み始めて、そんな細かいことを気にしている場合ではないことに気づいた。
 「一章」の1ページ目に「出自が庶民であるウィル」という人が登場するので、身分制度のある国もしくは世界の話なのだなと、取り敢えず了解して読み進める。次のページに「皇帝」が出てくる。そこから得られた「狭義のファンタジー」という定義は、けれどなんだか怪しくて、ついに「一八世紀の名のある職人」という表現の前に砕け散る。

 現代社会の話であることを理解するのに、45ページもかかってしまった。
 同時に、タイトルにある「プリンス」というのがなかなか登場しない、わけではなく、この皇帝すなわちプリンスだということも了解した。私はどんどん、察しが良くならなくてはいけない。

 なぜ本書がそれらの基本情報を省くというか、「お約束」に丸投げするのかというと、明白な理由がある。ひたすら皇帝がいかにかっこいいか、主人公がいかに切ないのかを描写するのに忙しく、時間とか場所とかどうでもいいことを書いている暇はないのだ。 
 
 この構造は、以前これも仕事で読んだ『最終兵器彼女』に似ている。仮に『サイカノ』の定義を「戦争で世界が滅びる話」だとすれば、「戦争の話なのに『敵』の描写がいっさい無い!」という、鮮烈な衝撃が得られる。
 しかし同書を「チビッ娘・ドジッ娘・メガネッ娘に萌える話」と定義したとき、『敵』の描写などそれこそなんぼのもんであろうか。

 以前、家人と交わした会話を思い出した。
 『胡蝶の夢』について、「松本良順が、高弟の困ったちゃんのお世話をしてあげる話」以外いっさい覚えてないと言ったら、「読んでないのも同然だ」と評された。
 「読みかたが違うだけだよ」と言ってみたら、「僕が間違っていた」と取り消された。

 そんなに間違ってないよ。
 というより、なんで『ダンディ・プリンス』のレビューに『胡蝶の夢』を引っぱってくる。司馬先生に謝れ。

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追記:あとがきに、本書が「プリンス」シリーズの第4弾であることが記されています。だから上記のレビューはちょっと言いすぎです。あとがきを読む前に書き始めました。ごめんなさい。
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by tokyo_ao | 2006-10-30 20:23 | 無謀/BLを総括する

Lesson7.『今宵、眼鏡クラブへ。』

 『生まれる前から眼鏡だいすきっことして人生を全うすることが決められていた秀香穂里です。(中略)眼鏡サイコー!』

 以上、「あとがき」の最初と最後の一文を引用してみた。
 「あとがき」から引用するのはレビューの本則からはずれるが、本書に関しては、これはもうそのような話なのでいたしかたない。

 書籍の売れ行き総合ベストテンに、BL系の同人誌(!)がふつうに入ってることで著名な「セブンアンドワイ」上においても、本書の予約状況は特異な動きを見せていた。ポイントは作家にある。
 なにしろ競争の激しいジャンルだから、ランキングの上のほうに来る作家といったら、二十年選手(二十有余年、ずっと腐りっぱなし。尊称としての「腐女子」を超えて「貴腐人」だとか)だの、「1シリーズ40巻で外伝もありますがなにか」みたいな人たちだ。そのなかで、この作家の販売リストは15冊でしかない。

 15冊のうちの9冊がここ10ヶ月に発行されていることから、いま脂が乗り切っている作家であることはわかる。しかし、単純に名前を検索してもそれほど出てこないし、決定的なヒット作があるわけでもないらしい。しかも本書は、このジャンルには珍しくシリーズ物でさえないのだ。

 ここで思い出した。知人の女性から聞いた、「眼鏡好き本」の話を。正確にいうと、「眼鏡をかけた男性を愛する女性のみを対象としたムックがある」という話だ。なんだその狭さは。
 1冊の本として成立するのだろうかと訝っていたのだが、これはつまり、そういう話なのか。眼鏡好きの腐女子がこぞってこのタイトルに喰いついてきた結果が、この予約状況なのか。

 ……物語の舞台は、六本木の一等地に位置するとある店。
 「サングラスにセル縁、メタルフレームにスクエア、そしてフレームレス」から、好きなメガネが選べる。この「メガネ」は「おい、そこのメガネ!」とかいうときの「メガネ」と同じで、人間だ。なんか戦隊物みたいだが、女性向けのバーを装った秘密デートクラブ(男は全員メガネ)なのだそうだ。

 こういう店が既に実在していてもおかしくないし、固定客もついてそうだ。本書も然り。作者が急死か出家でもしない限り、この設定がシリーズ化しなかったら、私もうこの仕事やめてもいいや。

 あと、「眼鏡好き本」の話を教えてくれた眼鏡好きの知人が、もうひとつの萌えポイントとして「体臭」を挙げてたことが、いま痛烈に気になる。だってこのメガネたちも香水つけてて、設定上から体臭がかなり重要に扱われてる。

 眼鏡と体臭。
 これがセットで萌えポイントになるのかどうか検証するのか。私がか? また「眼鏡モノ」読むのか。
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by tokyo_ao | 2006-10-30 14:44 | 無謀/BLを総括する

Lsson6.『監禁メタモルフォーゼ』

 『だって、八尋さんは狼のオレを可愛がりたかったんじゃないかって……』

 主人公は、日本人と狼人間(ルーマニア人)とのハーフなのだそうだ。満月とその前後、3日間だけ任意に狼に変身できるとともに発情期に入る。でも、まだ高校生だからかハーフだからか、子犬みたいな狼にしかなれず、犬好きの先輩に愛されてカラダをやりすごす。
 シリーズ第2弾にあたる本書の前作は、『調教メタモルフォーゼ』。

 つまり、人としてはなんとなく抵抗のある「調教」や「監禁」というシチュエーションも、半分けものということで「あ、だったらいっか」と読者は受け容れることができる。これは、作家のファンタジーによって用意された周到な装置だ。すまん、もはやこれまでだ。

 ……『しあわせにできる 10』の次に本書を読んだのは、明白な過ちだった。せっかく、初めて感情移入できかけてたのに。
 そう。つまらないと言うより、どこを面白がっていいやらわからなかった『しあわせに(略)』について、「王道ラブ」と言い切られた(ツキモノに)。

 言われてみればその、平凡な――というには決定的な部分で語弊があるが――人生のなかの、穏やかな持続する愛情の意味だとか、大切な人だからこそ些細なことで振り回される微妙な心のゆれだとか、たしかに共感しかけていた。

 で、
 『よーし。これからできるだけ、八尋さんとラブラブして、母さんに見せつけてやる!』
 これを言ってのけるのが狼少年の主人公、和人くん(18)。親不孝な。

 できるだけ飽きないように、傾向の異なる書名を順に読んでいくプランが裏目ったようだ。同ジャンルで「売れてる」ということのみをコンセプトに読書していくから、こういうことになる。この『しあわせにできる 10』と『監禁メタモルフォーゼ』、連続して読んだ人間が果たして世間に何人いるのか。

 売れる本を作りたいから、続けている読書なのに、なんかすごく矛盾してないか。
 てか、さっきコンビニのおばちゃんから「新庄剛志のお尻のセクシーさ」について語られた。私は読み書きと料理、それに飲酒だけして暮らしているから世間には疎い。
 だから「新庄剛志の尻のセクシーさ」が、ほぼ初対面の成人女性の話題としてポピュラーであるかどうかについても、自信はないのだけど。

 ……こんな本ばっか毎日読んでいるから、なんか私、へんなオーラを出してる?
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by tokyo_ao | 2006-10-28 22:51 | 無謀/BLを総括する

Lessoon5.『しあわせにできる 10』

 『ワーカホリックの本田とゴージャスリーマン久遠寺の王道ラブ』

 初めて本文ではなくツキモノ(出版界で、本のカバーとオビ、その他宣伝用の印刷物全般のこと)から引用してみる。なぜって、本文を読みはじめただけではわからなかったから。

 一見、なんということもない話なのだ。同様の印象はたとえば『子供の領分――rimix』を読んだときにも受けたが、そちらは男子高を舞台としているだけに、「きれいな(若い)男の子たちが/おおぜい/いちゃいちゃしている」というアドバンテージがある。
 しかし本書の舞台は「会社」だ。四捨五入すると、お互い而立(30)。なにかたのしいの?

 本書は、主人公2人の慌しい(これは「リーマン」ネタの萌えポイントだということを、学びつつある。ひまなリーマンを主人公とするBL小説、寡聞にして知らないや)やりとりから始まる。
 冒頭から「で、どっちが男役なんだ?」と素朴に思ってる自分に気づく。自分が作り変えられつつある。それはp9から始まる本文において、p13でほぼ明らかにされるけれど。

 シリーズ物の小説で、承前の場合をどうするかは永遠の課題だ。その点は前述の『恋は淫らにしどけなく』なんて、実に丁寧な描写で中途参加者にもわかりやすかった。そんなタイトルのくせにな。
 10巻からいきなり買う読者と、シリーズ追っかけてる読者の比率を考えたら、ここはノーインフォメーションでいいのかも。ただし一校正者としては、メインキャラクターの巻内初出のみ、フルネームで表記してはどうかと思う。 

 久遠寺皇
 本田雪彦

 ……ほら、だいたいわかる……。
 こうして世界の組成というものを知っていくのだな。
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by tokyo_ao | 2006-10-27 00:52 | 無謀/BLを総括する